地震ニュース

日本地震前兆現象観測ネットワーク 号外 '23 7/8

①『南海トラフ地震関連解説情報について -最近の南海トラフ周辺の地殻活動』

気象庁では、大規模地震の切迫性が高いと指摘されている南海トラフ周辺の地震活動や地殻変動等の状況を定期的に評価する為、 南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会、地震防災対策強化地域判定会を毎月開催している。

本資料は昨日7日開催した評価検討会、判定会で評価した調査結果を取りまとめたもの。 次回は8月7日を予定。

下記は、日テレが発表したものである。


②『南海トラフ沿いの地震 6月は目立った地震活動なく「特段の変化なし」 (日テレNEWS によるストーリー • 昨日 19:39)』

気象庁は南海トラフで巨大地震発生の可能性を評価する定例の検討会を開き、先月は、巨大地震に影響を与えるような目立った地震活動はなく、「特段の変化は観測されなかった」とする見解をまとめた。

気象庁は今後30年以内の発生確率が70%から80%とされる南海トラフ巨大地震について、専門家による定例の評価検討会を開き、想定震源域でおきた地震や観測データの分析を行なった。

気象庁によると、先月1日から今月5日までの期間に南海トラフ巨大地震の想定震源域とその周辺ではM3.5以上の地震が7回発生したという。

先月4日には和歌山県南方沖を震源とするM3.7の地震、先月11日には和歌山県北部を震源とするM4.1の地震があった。

更に先月は大隅半島東方沖を震源とする地震が3回発生しました。19日にはM4.7の地震が発生した後、翌日にかけて立て続けに地震があった。

この他に、先月23日には三重県南方沖を震源とするM3.5の地震、先月29日には、宮崎県の日向灘を震源とするM3.5の地震が起きている。

このうち、和歌山県北部と三重県南方沖を震源とする地震はフィリピン海プレートの「内部」でおきた地震で、南海トラフ巨大地震で想定されるプレート境界の地震とはメカが異なる。

これらの地震について、検討会は地震の規模が小さいことから周辺への大きな影響はないとして、「特に目立った地震活動ではない」と評価した。

一方、静岡県御前崎等で長期的に観測されている地盤の沈降はフィリピン海プレートの沈み込みに伴うものでその傾向に大きな変化はないとしている。

検討会は、こうした観測結果を総合的に判断し南海トラフ周辺で「特段の変化は観測されなかった」とする見解をまとめた。

評価検討会の会長で東京大学の平田直名誉教授は、南海トラフ沿いでは依然として、極めて高い確率で地震が起きる状況に変化はないとして「引き続き、大きな地震に備えてほしい」と話した。


③『「南海トラフ巨大地震」はいったいいつ起こるのか…その具体的な予測の「数字」(山村 武彦氏)』

今後30年以内に高い確率で発生が予測されている「南海トラフ巨大地震」。果たしてその実態はいかなるものなのだろうか。その巨大な災害はどのようなメカニズムで発生し、どのような被害をもたらすのだろうか。そして、我々はその未来にどう備えればよいのか。防災・危機管理アドバイザーの山村武彦氏に解説してもらった。

幅がある発生周期

ある領域で、同じアスペリティがほぼ一定の時間間隔で滑って地震を起こすと仮定したモデルを、固有地震モデルと呼び、地震調査研究推進本部における地震発生の長期評価等、南海トラフ巨大地震の発生確率の算定にも取り入れられている。

更に、南海トラフには生まれてから約3000万年の比較的若いフィリピン海プレートが沈み込んでおり、薄くかつ温度も高いため低角で沈み込み、プレート境界で固着も起こりやすく、震源域が陸地に近いので被害も大きくなりやすいと考えられている。

南海トラフ沿いでは、東海(主に静岡県沖)、東南海(主に愛知・三重県沖)、南海(主に四国沖)というセグメントごとに固有地震が発生する場合と、発生した固有地震によって他の固有地震が連動又は誘発され発生する場合がある。蓄積された歪が地震発生によって解放されると、その後その領域では、歪が蓄積されるまでの期間は平穏期が続くとされている。

つまり、南海トラフにおける海溝型地震は、繰り返し起こる「周期性」と、複数の固有地震の震源域で同時又は連続して起こる「連動性」が大きな特徴となっている。

領域によって異なるが、プレートの移動速度がほぼ一定である為に地震発生には周期性があると考えられるが、過去の南海トラフ地震を見る限り、その周期には幅があり、次の南海トラフ巨大地震がいつ発生するか、明確にその時期が判明している訳ではない。

東海地震、東南海地震、南海地震というようなセグメントごとに発生する固有地震の数十年単位の周期を「大地震周期」という。それとは別に、宝永地震のように広範囲の震源域が動き、甚大な被害をもたらす数百年単位の超巨大地震周期を「スーパーサイクル」と呼ぶことがある。

例えば南海地震でいえば、安政南海地震(1854年)のあとに起きた昭和南海地震(1946年)までの92年の周期が大地震周期である。直近最後の南海トラフ地震(1946年)から、今年(2023年)で77年経過している。次の地震が大地震周期で起きるМ8級のものになるか、宝永地震(1707年)から316年間起きていないスーパーサイクルの南海トラフ巨大地震になるか、今はまだよくわかっていない。

しかし、それが大地震周期であろうと、スーパーサイクルであろうと、いったん大地震が起きれば、大揺れ、大津波、建物倒壊、火災、停電、断水、道路・交通機関・通信回線・物流などの混乱という、厳しい試練が待ち受けていることに変わりはない。想定や周期予測に一喜一憂せず、大地震がいつ起きてもいいように、減災対策と不断の準備が不可欠である。

「巨大地震」という重み

厳密に定義付けられているわけではないが、地震の大きさをいう時、分かりやすくM7級を大地震、M8級は巨大地震、M9級を超巨大地震と呼ぶことがある。その言い方で言うと、阪神・淡路大震災(1995年)はM7.3だったので、いわゆる大地震、関東大震災(1923年)はM7.9で巨大地震、東日本大震災(2011年)はM9.0で超巨大地震という風になる。想定される南海トラフ巨大地震は、想定がM8級~M9級なので、一般的には巨大地震又は超巨大地震ということになる。

それが東日本大震災発生直後から「西日本(南海トラフ)でも巨大地震を警戒すべき」の声が高まり、政府は内閣府に「南海トラフの巨大地震モデル検討会」(第1回・2011年8月28日)、「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」(第1回・2012年4月20日)を設置して検討を進めた。

つまり、東日本大震災がきっかけで、南海トラフで発生が想定される最大規模の地震を「南海トラフ巨大地震」と呼ぶようになったのである。2012年7月、同ワーキンググループは中間報告をまとめ、南海トラフで想定される最大クラスの巨大地震を「東日本大震災を超え、国難ともいえる巨大災害」と位置づけた。この「巨大地震」という言葉には東日本大震災級を含むという意味が含まれているように思う。

単なる南海トラフ地震と南海トラフ巨大地震の違いは、地震規模だけでなく、それによってもたらされる被害が甚大になるということを意味する。ということは、「はじめに」で述べたように、道路、鉄道、港湾などが広範囲にダメージを受ければ、救援物資や復旧資機材などがすぐには調達できず、停電、断水等のインフラ復旧までに長時間かかることを覚悟し、事前に必要物資を備蓄しなければならないということである。「巨大地震」という言葉の重みをもう一度噛み締め、対策、備蓄、再点検のモチベーションとすべきである。

発生確率と切迫度

次の南海トラフ巨大地震がいつ起きるか、その発生時期の予測には諸説ある。2035年±5年、つまり2030年~2040年の間に発生するという説もあれば、それより早く発生するという説もある。

政府の地震調査委員会は2023年1月、南海トラフでM8~9級の地震発生確率は、10年以内30%程度、20年以内60%程度、30年以内70~80%、50年以内に90%程度もしくはそれ以上と発表している。

気象庁もウェブサイトで「南海トラフ地震は概ね100~150年間隔で繰り返し発生しており、前回の南海トラフ地震(昭和東南海地震《1944年》及び昭和南海地震《1946年》)から70年以上が経過した現在では、次の南海トラフ地震発生の切迫性が高まってきている」としている。

発生確率の計算や手法などについては一部で異論があるものの、幅はあっても一定の周期性があり、「南海トラフで大規模地震が発生する可能性が高まっている」という認識は専門家間でも概ね一致している。

南海トラフ巨大地震発生は30年後かもしれなし、今日か明日かもしれない。ただ、ずっと先だと思ってしまえば対策や準備がおろそかになってしまう。年に1度でもいいので、今夜か明日大地震が起きると思って家具類の整理整頓・固定・転倒防止対、ガラス飛散防止フィルム貼付、防災備蓄の再確認を真剣にして欲しいものである。

更に続きとなる<実は前回の「南海トラフ巨大地震」から、すでに316年が経過しているという「恐るべき事実」>では、過去の歴史から今後の地震の発生可能性とその被害について検討を重ねる。

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